マジックストーン
ホンモノとニセモノ
◇◇◇
夏休みに入ってしばらく経った今日この頃。
淡いピンクの浴衣を纏って、彩織ちゃんに髪の毛を結い上げてもらっている私は、今日の夏祭りにあまり乗り気になれない。
なんでかって、それは簡単。
今日の夏祭りデートが、優勝のご褒美デートだから。
本当は嫌だったから、断ろうとしたのに。神崎先輩ったら、先に彩織ちゃんに言っちゃったから、ドタキャンするにも出来なかったの。
「ほおら、優衣ちゃん可愛いーっ」
どうせなら彩織ちゃんが行けばいいと思うんだけど。
最後にまた帯を軽く直してもらってから下駄を履いた。 うーん。靴擦れしちゃいそう。
いきなり「ねえ、優衣ちゃん」と真面目な顔で切り出した彩織ちゃん。今から何を言おうとしてるか、なんとなく分かってしまう私がイヤ。
「明日からピアノのレッスンが始まるみたい」
ああ、やっぱり。
「もしかしてライアン先生来るの?」
「分からないの。 だから、今日楽しんできて? 彼氏にすら会えない毎日が続いちゃうんだし……ね?」
「……だから、神崎先輩は彼氏じゃないって……」
呆れながらも「いってきます」と家を出た私はビックリして思わず叫びそうになった。