マジックストーン
紺色が平べったく広がるそれを見つめながら、どうして神崎先輩は、と考えを巡らせる。
隙がない人、なんだろう。
いつも誰かのことを観察して、小さな変化も見逃さない鋭い人。
だからなのか、それとも私が見落としてるだけなのか、神崎先輩は“いつも同じ”人。
いつも同じ笑顔にいつもと同じ優しさ。
安心できる反面、ほんの少し怖い気がするのは私だけ?
神崎先輩のこと知りたいけど、なんだか知りたくないような気もするの。
クレープ屋さんの前に並ぶ神崎先輩の背中には優しさが貼り付けられている、様にも見える。
きっと貼り付けられたそれを剥がしてあげるのは私の役割ではない――
「……え……ねえ!」
「あっ、はい?」
胸がぎゅーっとされる感覚に陥っていた私は、顔の前で手を振る知らない男の人に視線を合わせた。
「キミ、名前は?」
「椎葉優衣です……何か用ですか?」
「学校は?」
「……え?英明高校ですけど……。あのっ」
「へえ。ボクのこと知ってる?」
「しっ、知らないですっ」
足が痛いのを我慢して下駄を鳴らして神崎先輩の背中に向かって走る。
なんなんだろう、あの人!
聞いたことに対して全然答えてくれないし、なんだか変だし怖いしっ。