マジックストーン
そう言って神崎先輩を連れてやってきた場所は、私の家。
「どうぞ」と少し振り返って神崎先輩に言った後、「彩織ちゃん、ただいまあ」とリビングに向かって叫ぶ。
「……あれ?」
いつもなら「おかえりー」と聞こえるはずなのに。
「はあ。優衣ちゃんって、ホントわかってないよね、男ってゆーもんを」
リビングの扉を開いた私の背中から聞こえてきたのは、神崎先輩の呆れ声。
わかってないよね、なんて言われても。そんなに男の人に興味ないしなあ。
「とりあえず、ソファーに座ってください。 ――アイスコーヒーとアイスティー、どっちにします?」
「じゃあ、優衣ちゃんと同じで」と言われて出したアイスティーはアールグレイ。
半分くらい飲み終わった頃、
「何か好きな曲とかあります?」
立ち上がりながら神崎先輩に聞いた。
グランドピアノが置いてある隣の部屋のドアを開けた私は準備を始める。
釣られてやってきた神崎先輩は遠慮がちに足を踏み入れた。
「お礼になる程、私、上手じゃないんです。 でも、神崎先輩に聞いてほしくて……」
「優衣ちゃんの大好きな曲がいいな」