マジックストーン

 けたけた笑い始めた梨海ちゃんは「バカねえ」と手をひらひらさせる。

「優衣は全部顔に出てるのよ。それに天然鈍感単純の三拍子揃っちゃってるの」

 な、なにその三拍子。初めて聞いたんですけど。

「そんなことない!私普通だもんっ」

「優衣のフツウはフツウじゃないのよ」

 軽く流す梨海ちゃんがブレザーの内ポケットから携帯を取り出した時授業終了のチャイムがなった。

 「あたしトイレ行くけど行く?」と立ち上がった梨海ちゃんに首を横に振った。

 文化祭……私、ホントにメイド服着なきゃダメなのかな……?着たくないんだけどな――あ!だったら、小道具係みたいなのとかあるよねっ?文化祭委員の子に聞いてみよーっ。

 さっき黒板に色々書いてた子が文化祭委員だった気がするんだけどな……あっ、いた。

「ねえねえ、ユカリちゃん」

「どうしたの?優衣ちゃん」

「ユカリちゃんって文化祭委員?」

「あたしじゃなくてチヒロだよー」

 ……え。チヒロちゃん……。

 梨海ちゃん命名の脳内パニックが起こったのと同時くらいにユカリちゃんが「チヒローっ。ちょっと来てーっ」と叫んだ。

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