マジックストーン
だいたい、初対面なのに、昔からのお友達っ、みたいな感じの人を忘れるわけないもの。
それに、あんなに整った容姿の持ち主に一度でも会ったら忘れるわけないし。
「……い。…優衣っ」
「なっ、何?」
「断れたよ」
「断った……?」
「………伴奏に決まってるでしょっ!!」
「ごめんなさいっ!!」
ギッと睨む梨海ちゃんだけど、その表情からして満足してるみたい。
私はどうやって断ったのか、聞こうか迷って、止めた。
だって、怖いんだもんっ。
やってやった、という雰囲気が梨海ちゃんを包み、その隣を小さくなって歩く私。
「まっさか、優衣が神崎先輩に声掛けられるとはね」
「へ?」
「もしかして優衣って、『神崎祥也』を知らなかったりするの?」
「え、だって。さっき、初めて会ったんだよ?知ってるも何もないと思うんだけど」
梨海ちゃんは、私を見てあからさまにため息をついてから、くすり、と笑った。