マジックストーン
「そうそう。女装の話だったんだよね」自分の手のひらを見つめて、それからきゅっとそれを握った神崎先輩は話を元に戻した。
「簡単に言えば、優衣ちゃんの身代わりかな」
「身代わり?」
「そう、身代わり。さっき俺が優衣ちゃんを抱きしめたでしょ?その時、メイドに女装した滝本とユウが――まあ、さっきいたのは滝本なんだけど。優衣ちゃんのフリして代わりに逃げてるんだよ」
交代で逃げて、最終的には優衣ちゃんのクラスにたどり着くように仕向けるみたい、とにこやかに言う神崎先輩。
「あのっ……それで、神崎先輩はどこに行くんですか?」
私の手を握り少しだけ早足な神崎先輩。それに置いて行かれないように必死にあとをつく。
正直、あんなに走った後だから歩くのも辛いんだけどな。
……なんて言えない。一応、助けてもらったんだし。ていうか、タカジくんと林先輩に助けてもらったようなものだけど。
ふわり、と綿菓子みたいな微笑みをくれた神崎先輩は「ひ・み・つ」と目を細めた。
そ、そんな色っぽく言われても、私どうすればいいんでしょうか?とりあえず、聞かなかったことにしてみたけど……。
それより、行き先も言わずにどこに行くつもりなんだろう、神崎先輩。