マジックストーン
初めてではないけど、数回目の本気モード。ドキッとしてビックリしてどうすればいいか分からなくなっちゃう、そんな時間。
目の前の真剣な表情に、どうやって返せばいいのか。分からない私はただ目を泳がすしかないの。
「……ごめん、優衣ちゃん。キスしたい」
すっと後頭部に大きな手のひらがやってきた。
スローモーションみたいに近づく神崎先輩の顔に思わずドキリとしたのは――
「かかかかかか神崎先輩っ」
――約束を破ったのを思い出したから
ぴたっと神崎先輩の口元を私の両手のひらで覆った。むっとして私を見てることなんて気にしない!気にしちゃいけないっ! だって、私――
「ごめんなさいっ! あの……私――」
「それは好きって言ったことに対しての返事?」
「そうじゃなくてっ! えっと、私……その、神崎先輩との約束を……」
「約束を?」
「や……ぶっちゃったんです。――あ! で、でも!破ろうと思って破ったわけじゃなくて……。だから、その……気付いたら破ってたんです。 でもっ!しょうがなかったんです!私、あそこで加賀美さんに助けてもらわなかったら――」
「加賀美――って敦司に?!」