マジックストーン
心底驚いたような顔をしている神崎先輩は私を抱き寄せていた腕を解くと、私の着ているメイド服を振り始めた。
「えっ……ちょ、何やってるんですかっ」
「ごめ、静かに」
バサバサと短いスカートが捲れるなんてお構い無しに、メイド服を振り続ける。
神崎先輩の異常行動に泣きだしそうになった私に、カラン、と何かが床に落ちた音が聞こえた。
えっ?と思って下を見たのと同時に、ミシャと何かが潰れる音。
「ちっ。……何考えてんだよ」
不意に見た神崎先輩の横顔に笑顔はなくて。何が起きたのかすら分からない私にとって、怖いと思う以外なかった。
きゅっと自分の胸元を掴み、じっと神崎先輩の足元を見ていた。
神崎先輩の、左足の下には何があるんだろう。何を踏み潰したのかな?私の、このメイド服に付いてたんだよね、それ。
バレないように、少しだけ神崎先輩を見上げた。
怒ってる。それでいて、悔しそうで苦しそうで、不安がごちゃ混ぜになった、そんな瞳の色。