マジックストーン

 梨海ちゃんや舞希ちゃんを見てから、さっきまで神崎先輩の声が聞こえてた携帯に視線を落とした。

 なんで、こんなに、苦しいのかな? 胸の奥が痛くて、もやもやする。

「……なんか、ね? 舞希ちゃんに会いたいって……今から来るって、言ってたよ……?」

 声にするだけで、どうしてこんなにつらいの……?

「はあ? 舞希なんで?」

「知らないよっ!! なんであたしなの?」

「……私だって、分かんない……」

 どうして、胸の奥が痛くて、苦しくて、つらくて、泣きたくなるの?

 私、どこか悪いのかな? 病院でも行ったほうがいいのかも。今日、お家帰ったら彩織ちゃんに病院連れてってもらおうかな。

 でも、どうしていきなりこんなこと起こったんだろ。私、何にもしてないのに。昨日も夜更かししないでちゃんと寝たし、風邪引いてるわけじゃないし。

 不意に視線を上げれば、梨海ちゃんと舞希ちゃんが驚いたように顔を見合せてから、

「「優衣、それは“恋”だよ」」

 突拍子もなく、二人して極上の微笑みを浮かべて、さらってそんなことを言った。

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