マジックストーン
「ちょっ……な、何するんですかっ」
「え? いいじゃん、別に。減るもんじゃないし」
「へ、減るんですっ! 私の心が――」
すり減るんです!を遮ったのは――
「あっ! 君が編入生ちゃん、かな?」
――舞希ちゃんに話し掛けた神崎先輩だった
いきなり話し掛けられた舞希ちゃんは、少し困った様子で私をちらりと見た。
「あ、はい。そうですけど?」
「俺、3年の神崎祥也で優衣ちゃんの彼氏。 よろしくね?」
っえ?! ちょ、ちょっと!!
「かかか彼氏?! ち、違っ!! 神崎先輩何言ってるんですかっ」
「あれ? 違うの?」
「違いますっ」
神崎先輩の腕の中から出ようと藻掻くけど、それに気付いたからなのか、ぎゅうっとさらに抱きしめられた。
あー、もうっ。 どうして神崎先輩は普通の顔して、しかも廊下で抱きしめていられるの?
「優衣付き合えばいいのに」
さらっと、そんなことを言ったのは梨海ちゃん。即座に拒否しようと、口を開いたのに。
「やっぱ、梨海ちゃんもそう思うよね。 それで、編入生ちゃんのお名前は?」
神崎先輩に先を越されてしまった。