マジックストーン

「……神崎先輩いい加減離して下さい」

 私、ずっとずっと神崎先輩に抱きしめられてたっ!!こんな恥ずかしいことをずっと……。

 はあ、もう。どうして神崎先輩といると、嫌なこともどうでも良くなっちゃうんだろう。最初は抱きしめられるのだって、ホント、嫌だったのに。

 私、神崎先輩のこと好きなのかな?だいたい、すきってなんだろ。どういう風に思ったら、感じたら、すきになるんだろ。

 ……さーぱり、分かんない。

 それに、梨海ちゃんと舞希ちゃんがとーっても優しい微笑みを私に向けてるしっ!!

「……神崎先輩。そろそろ授業が始まりますので、当然、離していただけますよね」

 腕の中で半回転して、神崎先輩を見上げながら、胸を押した。

「……っ」

 しばらく見上げていると、諦めてくれたのか、腕の力を弱める。神崎先輩の腕の中から解放された私は一歩下がって微笑んだ。

「それでは失礼します。 梨海ちゃん舞希ちゃん行こう?」

 岩佐先輩に小さくお辞儀をして踵を返して教室に向かって歩きだす。

 途中、舞希ちゃんが岩佐先輩に引き止められて振り返ったら、何故か眉を下げた神崎先輩と目が合った。

< 216 / 275 >

この作品をシェア

pagetop