マジックストーン
次の日。
「あの。どうしても聞きたいことがあるんですけど」
コーヒーの香りが充満する保健室にて、何杯目かのコーヒーをいれる白衣の後ろ姿に投げ掛けた。
「誰と誰の恋ばなが聞きたいんだ? ……ああ。あれか?副会長と書記の恋ばなとかか?最近よく聞かれるんだよなー」
あとは会長と会計が付き合ってるのはホントなのかとかな、とぺらぺらと喋るのは、細めの黒フレームの眼鏡が似合う養護教諭の石谷先生。
透き通った氷が浮かぶ緑茶が入ったグラスは汗をかいている。
「そうじゃなくて……その――」
「とうとう好きにでもなっちゃったか?俺は止めとけって言ったのによ」
振り返った石谷先生はくいっとマグカップを傾けた。
神崎祥也ねー、とぶつぶつ言い始めた石谷先生は、私と向かい合うように椅子に座り天を仰ぐ。
「好きになっちゃったっていうか、何ていうか……だから、そのことで相談に来たんですけど……」
「七瀬に相談出来ないから保健室(ここ)に来たんだろ?」
こくりと首を縦に振る。乾いた喉を潤すためにグラスに口を付けた。
冷たいそれは喉を通って胃に落ちる。落ちたそれはまだ冷たい。
「石谷先生。すきって何ですか?」