マジックストーン

 昨日。梨海ちゃんと舞希ちゃんに『それは恋だよ』なんて言われたから、気になるだけかもしれない。

 神崎先輩はよく私に『好き』って言ってくれる。でも、その“好き”って何?

「お前は好きも分かんねーのか」

 大きなため息をついた後、石谷先生は分厚い辞書を取り出して、ぺらぺらと捲り始めた。

「好きっつうのは『好くこと。気に入って心がそれに向かうこと。その気持ち』だとよ」

 気に入って心がそれに向かうこと……?

「だいたい何がきっかけで、好きが何だか知りたくなったんだ?」

「舞希ちゃん……あ、えっと、アメリカからの編入生の舞希ちゃんに神崎先輩が会いたいって……。そしたら、なんだかもやもやして苦しくて泣きたくなったんです。 梨海ちゃんと舞希ちゃんには、『それは恋だよ』って言われたんですけど……どう思いますか?」

「どう思いますかって……お前なあ……」

 ため息をついて、頭を掻く石谷先生はぐるっと視線を回す。少しの間があって、どこを見ているか分からなかった瞳とかち合った。

「お前は俺とキスできるか?」

 ……なっ?! きっ……えっ?!

< 218 / 275 >

この作品をシェア

pagetop