マジックストーン
昨日。梨海ちゃんと舞希ちゃんに『それは恋だよ』なんて言われたから、気になるだけかもしれない。
神崎先輩はよく私に『好き』って言ってくれる。でも、その“好き”って何?
「お前は好きも分かんねーのか」
大きなため息をついた後、石谷先生は分厚い辞書を取り出して、ぺらぺらと捲り始めた。
「好きっつうのは『好くこと。気に入って心がそれに向かうこと。その気持ち』だとよ」
気に入って心がそれに向かうこと……?
「だいたい何がきっかけで、好きが何だか知りたくなったんだ?」
「舞希ちゃん……あ、えっと、アメリカからの編入生の舞希ちゃんに神崎先輩が会いたいって……。そしたら、なんだかもやもやして苦しくて泣きたくなったんです。 梨海ちゃんと舞希ちゃんには、『それは恋だよ』って言われたんですけど……どう思いますか?」
「どう思いますかって……お前なあ……」
ため息をついて、頭を掻く石谷先生はぐるっと視線を回す。少しの間があって、どこを見ているか分からなかった瞳とかち合った。
「お前は俺とキスできるか?」
……なっ?! きっ……えっ?!