マジックストーン


◆◆


「やっぱり、可愛い」

 優しく抱きしめたつもりなのに、優衣ちゃんったらキツく抱きしめられたみたいに硬直しちゃったんだもん。

 ますます気になっちゃう。

「てめぇが言ってた女って……」

「あ、啓輔。まだいたんだ」

「お前が連れて来たんだろ」

「もう帰ってると思ったからさ」

「で?卒業式の日に電話で言ってた女ってアレ?あのちっこいのか?」

「椎葉優衣ちゃん。可愛いと思わない?」

 啓輔は「どこが」と言いながら、欠伸を噛みしめた。

 ……どこがってねぇ。

「反応、表情、身長、声、匂い――」

「黙れ、変態」

「変態?!心外だなぁ〜」

「なんで、可愛い=匂いになるんだよ!」

「抱きしめた時いい匂いしたから」

 ふわり、と作られた香りではない何かが俺の鼻をかすめた。

 久しぶりに香水以外の香りのする女の子を抱きしめた気がする。

 安心するような、癒されるような。

「意味分かんねぇ。……祥也。帰るぞ」

「はいはい」

 だるそうに歩き出した啓輔の背中を眺めながら、俺も歩きだした。



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