マジックストーン
「あ、の! 二つ目の自分を知ってほしくなる、は、もう私のこと、神崎先輩は知ってるんじゃないんですか?」
「まあ、確かにそうだな。じゃあ、二つ目はやきもちを妬くこと、かな」
ま、これもクリアってとこか、と石谷先生は立ち上がって、窓を開けた。
すーっと入ってきたのは秋の風。
やっぱり、すきって難しいみたい。なんだか色々考えなきゃいけないみたいだし……あ! そっか!
「神崎先輩に会って、試してみればいいんですよねっ?」
「それが一番手っ取り早い方法だな。 ――あ。 椎葉。 ヤツは4月頃からお前を気に入ってるかもしれねーけど、諦めっていうのはどれに対しても来るもんだぜ。特に、えさをばらまいてるのに、一向に食い付く素振りがなきゃ――つまんねーだろ? だから、俺が教えた三ヵ条に当てはまんなくても、好きだって思ったら、そのえさに食い付きな。 食った後で、違うなって気付いたって遅くはねーんだからな」
とりあえず付き合ってみるのももう一つの手だ、とくしゃりと私の頭を撫でた。
「まあ、どっちもどっちだろうけど」
そう言って乾いた笑い声が保健室に響いた。