マジックストーン
「優衣ちゃんどうしてそんなこと言おうとするの?どうして泣いてるの?」
どうして、と次々に質問が降ってくる。
「俺、もう、分かんないんだ……」
泣き出しそうな声に驚いて顔を上げれば、悲しそうに微笑む神崎先輩と目が合った。
「神崎せんぱ……っ」
「っだから、昨日も言ったで――」
「私はっ!」
一度、大きく深呼吸。
「神崎先輩!わた――」
「それ以上言わないでよ。俺、これでも傷ついてるんだからさ。……ごめん。少し期待してたんだ。俺が女にキスされてるのを見た優衣ちゃんが泣いてて……もしかしてって。好きでもなんでもない男にしつこくされてたから、なんだかスッキリしたんだよね。だから、嬉しくてつい泣いちゃ――」
――パシンっ。
泣きながら、それでも、力一杯右手を振り抜いた。
「ばかっ! どうして……どうして、私の話を聞こうともしてくれないんですかっ?! おめでとうございますなんて言いたくありません!それに……好きな人が私と全然比にならないくらいの美人さんとキスしてたら、泣くに決まってるじゃないですか!」
「……え?」
一気にまくし立てる私に驚く神崎先輩そっちのけで、振り抜いた右手で神崎先輩の胸元を握った。