マジックストーン
「じゃあ、なんで私なんか――」
「ゆーいちゃーんっ。お・は・よ」
後ろから抱きしめられ、耳元で聞き覚えのある甘く優しい声色。
「かかかかかかっ!!!!」
「叫ぶの?叫ぶなら喜んで、口を塞いであげるけど、どうする?」
再び耳元で。
でも、何故か私を抱きしめる力を強め、甘さと優しさは変わらないのに、苦味が効いたびくりとする声。
「あっ。もちろん、俺の口で優衣ちゃんの口を塞ぐんだから、チュウになるねっ」
語尾に星マークが出そうな気軽さで、私の耳元で囁く。
き、キス?!!
ななな何で、昨日あったばっかりのよく分からない先輩(ひと)と、キスしなくちゃならないんですかっ!!
「さ、叫びませんからっ。離してくださいっ!!」
「え〜。ヤダって言ったら?」
「わ、私も嫌ですっ!!」
神崎先輩は「ホント可愛いんだからっ」なんて、ふわりと微笑み私を解放した。