マジックストーン
神崎先輩の腕の中でくるりと半回転。とん、と胸を押して一歩下がり見上げた。
「神崎先輩って浮気するんですか?」
こういうことって聞いてみないと分からないと思うの。だって、浮気するかしないかなんて、個人差があるわけだし……。
「えっ、ちょっ、待って……俺は浮気なんてしないよ?どうしてそんなこと聞くの?」
「みんな、神崎先輩の浮気に気を付けろって言うんです。どうしてみんなそんなこと、聞くんですかね?」
なんでだろうねえ、と私の頭を撫でながら神崎先輩は、
「それで? 優衣はどうして元気がないの?」
と屈んで私の顔を覗き込んだ。
色んな意味でどきりとした私は小さくなって身体を引く。だって、顔近いんだもん。
「ぜっ、全然元気ですっ」
「うそ。昨日もちょっと元気なかったでしょ? ……誰かに何かされた?」
首を振る私を神崎先輩は静かに抱きしめた。
「俺に言えない?」
「だって……」
「だって?」
「……神崎先輩は、誰に会いに教室に来てるんですか……?」
下から見上げると、神崎先輩は目を大きくして、「あ」と呟いた。
「梨海ちゃんでも舞希ちゃんでもなくて、優衣に会いに来てるよ」
だからヤキモチ妬かないで、と神崎先輩は甘く優しく笑った。