マジックストーン


 解放された私は、急いで梨海ちゃんの後ろに隠れ、肩ごしに様子を伺う。

「あ。梨海ちゃん、おはよ」

「神崎先輩、おはようございます」

「後ろに優衣ちゃん隠さないでよぉ」

「隠しているつもりはないんですけど」

「ほら、優衣ちゃん。今日は、学校サボってどっかブラブラしようよ」

 誰でも好きになっちゃうような、柔らかい笑顔を向けながら近づいてくる神崎先輩。

 な、なんで学校をサボってまで神崎先輩と一緒にいなくちゃなんないんですかっ!

 私、あなたみたいな人苦手なんですぅっ!

「ややややや!!」

「優衣、嫌ですって。全身で拒絶してますけど、どうします?」

「しょうがないなぁ……」

 神崎先輩は、困ったなとでも言いたげな笑みを浮かべた。

 全然、困ってるように見えないんですけどっ。

 今度は何か思いついたみたいな微笑みを一瞬その綺麗な顔に浮かべ、梨海ちゃんを退かして私の手首を掴んだ。


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