マジックストーン
「本当に彩織さんに話さなくていいの?」
「はい。私にケガはなかったですし……」
「そっか」と微笑んだ神崎先輩は私の頭に大きな手のひらを乗せた。
「本当に今日はごめん。優衣は何も悪くないから。優衣を守るって決めたのにね……。情けない彼氏でごめん」
「神崎先輩……」
「いつか、何か起こるとは予想してたんだ。啓輔もそれを感じてたみたいだから、舞希ちゃんと梨海ちゃんになるべく一緒にいるように頼んでくれてたみたい」
あっ……だから、なんだ。トイレに行くにも職員室に行くにもいつも二人が一緒にいてくれたのは。
「でも、マワされかけるなんて……そんなことになるとは思わなかった。怖い思いさせてごめんね」
「……そんなに謝らないでください」
「え?」
「ブラウスはぼろぼろになっちゃいましたけど、ホントに何もされてないんです。 ……だから。だから、笑ってください。私、笑ってる神崎先輩が好きなんです」
少し驚いた様子を見せたのは一瞬で。気付いたら、ふわっと神崎先輩に抱きしめられた。
甘い、甘い、神崎先輩の香り。「優衣……」と耳元で響く甘い声。
それだけで私は安心するんです。