マジックストーン

「……あの」

「ん?」

「私、回されかけてないですよ?」

「………」

 あれ? どうして神崎先輩黙っちゃうの?だって、神崎先輩が『マワされかけるなんて』って言った、よね?

 でも、私、ぐるぐる回されてないんだけどなあ。

「いや、それは……その、ね? 何ていうか、何とも言えないっていうか」

「だって、神崎先輩が――」

「わっ、わかったから、ね?優衣、この話はもう終わり」

 「ね?ね?」と強引に終わらせた神崎先輩は、もう一度私の頭に手のひらを乗せた。

 ……帰っちゃうのかな。

「――っ?!」

 神崎先輩に身体を寄せて、きゅっと制服を握った。

「……か、かえっちゃ、いや……」

 い、言っちゃった……。でも、言わなかったら後悔すると思ったんだもん。……だって、神崎先輩私がちゃんと好きだって信じてないみたいだったし……。

 だからって、いきなり過ぎたかな?神崎先輩全然動かないっ。 どうしようっ!!何この女、とか思われてたらっ。

「か、神崎先輩……?」

 恐る恐る見上げると、ぽかーんとしていた神崎先輩は、はっとしていつもの笑みを浮かべた。

「背伸びしてちゅう。忘れてるよ?」

 そう言って、自分の唇をぽんぽんっと意地悪く微笑んだ。

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