マジックストーン
虎の眼は静かに光る
◇◇◇
静かに響き渡る足音。 それに加えて今夜はどんよりとした分厚い雲が空を覆っている。
午後8時半。目的地まであと30分はかかる。
避けては通れない道か。はじめから分かってた。でも、その道を避けよう、避けようとしてきた。 結果的にこうなったのは、避けようとしてきた自分が悪い。だけど……避けることしか思いつかなかった。
「にゃー」
鳴き声に下を見れば脚に擦り寄る黒い物体。
「猫……しかも、黒猫……」
幸か不幸か。お前はどっちなんだ?ついてくるなら、幸の方がいいに決まってる。まあ、不幸だとしても、な。
「お前も一人か?」
黒猫の性格はおおらかで甘えん坊で人好きなんだろ?
「最後までついてこれたら、飼ってあげるよ」
しゃがんで黒猫の喉を優しく撫でれば、ゴロゴロと喉を鳴らす。
立ち上がり歩き始めれば「にゃー」と可愛らしい鳴き声が聞こえて、少し心が軽くなった。
長いため息をつきながら空を見上げた。見えるはずのない星が見たくて。