マジックストーン
水を打ったような静けさに耐えられなくなったのは、やはり俺の方だった。
「……あんただろ」
ゆっくりと言葉を吐いた。思った通り俺の口から見事に水分が奪われていた。
「なんのことかな?」
ふっと笑いながら俺を見るこいつの瞳は俺に対しての憎悪や敵対心が映っている。
「……盗聴器から始まり、優衣を……」
「ああ。優衣ちゃん、カワイイよね」
にやり、と口元が釣り上がった。間違いない。こいつだ――
「そんなカワイイカワイイ優衣ちゃん、気に入っちゃったな。あんな純粋で何も知らない子が祥也と付き合ってていいのかな?いらないんだったら、もらってあげ――」
「ふざけんな!! 誰があんたになんか優衣を渡すか!」
「ボクの婚約者を奪ったのは祥也、キミだよ」
「――っ!! 俺はっ――」
「ボクは何もかもキミに奪われたんだ。ひとつくらいキミの――祥也の大切なものひとつもらうくらいいいよね? 優衣ちゃんはキミと一緒にいても幸せになんてなれない。自分が一番分かってるんだろう?」
本気で優衣を奪う気か……? ちくしょう……引き分けどころかっ。
「……あんただって優衣は幸せにできねえだろ」
「どうかな」
「あんたがっ……あんだが優衣を襲わせたんだろ!!」