マジックストーン


「なっ、何するんですかっ!!」

「……っ。何ってキスだよ、キ・ス!俺とキス出来て嬉しいでしょ?まぁ、雰囲気がちょっとあれだったけど」

「意味分かんないですっ!!昨日初めて言葉を交した人と、何が良くて、嬉しくて、き、キスしなくちゃいけないんですかっ?!!別に、神崎先輩とキスしたってなあんにも嬉しくないんですからっ!!!」

 最後に、ファーストキスだったのに、と付け加えようとしてやめた。

 とりあえず、神崎先輩の顔なんてみたくなくて、だからって教室にも戻りにくくて。

 ちょうど頭が痛くなってきたのを利用して、保健室に逃げ込んだ。

「………い、優衣?」

 優しく穏やかな声。

 あぁ、梨海ちゃんの声だ、と重い瞼を持ち上げると、思ったよりもぼやけた視界。

「あ……、梨海ちゃん」

「ねぇ、優衣。熱あるわよ。帰りなさい」

「え、でも……」

「今の状況で教室戻っても、また囲まれててんやわんやになるだけ。倒れるかもよ?もう、彩織さんに連絡入れちゃったし、そろそろ迎えに来る頃だから」

「ありがとう、梨海ちゃん」

「鞄、ここに置いて置くから。あと少し休んでなさい」

 小さく返事をした後すぐに、身体がまどろみ始めた。


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