マジックストーン


 始めから最後までアップテンポで明るい曲。

 確かこの曲はヨーロッパにあるなんとかっていう国の人が作ったんだっけ。

 歌詞もあるんだよね。

 口ずさみながら3番まで弾けば、隣の部屋から「ご飯、出来るよー」と、彩織ちゃんの声。

「はーいっ」

 返事をして手を止め、ピアノに赤い布(埃避けみたいな、ほらっ。アレだよっ)を掛け、隣の部屋に向かう。

 キッチンからいい匂いがして、さらにお腹が減る。

「彩織ちゃん、お腹減ったー」

「はいはい。あともう少しだから。それより、さっきの曲。あれ、好き」

「彩織ちゃんも?私も好きなの。あの明るい感じと軽い感じが楽しい」

「そういうピアノを、毎日弾いてね?」

「はーい。何か手伝うっ」

「止めてよ、優衣ちゃん。キッチンが反乱起こしちゃうよ」

 た、確かに、私は料理とか全然出来ないけどっ!!

 可愛らしく笑う彩織ちゃんに釣られて笑ってダイニングに戻り、素直に椅子に座った。

 座った瞬間、あの悪夢が頭を過ったけど、急いで頭から追い出した。


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