マジックストーン


「分かんないの?」

「……はい」

「じゃあ、初めて会った場所は?思い出したでしょ」

「……ごめんなさい」

 だって!
 初めて会った場所は、梨海ちゃんと一緒に廊下、って私は思ってるんだから。

「ココ、だよ。ココ」

 と、廊下の角で脚を止めた神崎先輩。

 私と神崎先輩って廊下の角で会ったの?

「ココ、ですか?」

「まだ、分かんないの?ってか、思い出そうよーっ」

「本当に、ココで会ったんですか?私、全然覚えてないんですけどっ」

「俺と優衣ちゃん、ココでぶつかったんだよ」

「ぶつかった?」

「そう。ちょっとだけど話だってしたんだよ?まぁ、優衣ちゃん急いでたみたいだしね」

 私が、そうなんですか、と呟こうと口を開いた時。

「ま、俺がわざとぶつかったんだけどね」

 俺がジュース買っといてあげたんだけどね、みたいに軽く言い放ってもいいんですかね?

 っていうか、まったく知らない人に“わざと”ぶつかるってどんな神経してるんですかっ?!


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