マジックストーン
「わざとぶつかったんですかっ?!」
「うんっ。だってさ、気付いてほし――」
「おはよー、優衣」
「あっ。梨海ちゃん、おはよ」
ちょうど廊下に出てきた梨海ちゃんが、私を見て「仲良いね」と、一言。
「良くない良くないっ!!」
「優衣ちゃん、ヒドイっ。こんなに俺達ラブラブなのに……」
「ラっ?!ち、違いますっ。ただの“先輩”じゃないですかっ!!」
「ふーん。優衣ったら、ただの“先輩”と、そんなに密着して歩くんだ」
「そ、それは!神崎先輩が、きっ……」
「「き?」」
「神崎先輩が、キスするって言ったから」と言おうとしたのにっ。
『キス』だなんて、最近まで私には程遠い言葉だったから、口にするのさえ少し億劫で。
一発で言えないことを、この二人は分かってる。
だから、そうやってニヤニヤしながら私を見てくるんでしょっ?!