マジックストーン


「バカッ!!」

 泣きそうになった私は、神崎先輩の手を振りほどいて教室に逃げ込んだ。

 もう……。

 乱暴に鞄を机の横にかけて、机に突っ伏した。

 私がキスされた次の日から、梨海ちゃんもおかしいの。

 神崎先輩に対して、あんなに刺々しい声色だったのに、なんだかその刺がとれてる気がした。

「優衣、ゆーいーっ」

「………梨海ちゃんのバカ」

「だって、あんな風に歩いてたらカップルとしか見えないじゃない。
例え、神崎先輩にキスで脅されてても。嫌だからっておとなしくして、されるがままなんだから」

「何で、私なのかな?どう考えたって、私より梨海ちゃんの方が綺麗なのに……」

「“優衣”だから、じゃない?まぁ、詳しくは知らないけど。案外、危険人物じゃなさそうよ」

 ………え?

 この間まで、神崎先輩のこと“危険人物”みたく言ってませんでしたかっ?!

「り、梨海ちゃん?!」

「くっついちゃえば?」

 にこり、と首を傾げて微笑む梨海ちゃんの2つに結ってある明るい茶髪が右に揺れる。

 梨海ちゃん、綺麗……じゃなくてっ。


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