マジックストーン

「ははは離してくださいっ」

 体をよじって、神崎先輩の腕の中から逃げ出して梨海ちゃんのもとへ駆け寄る。

 梨海ちゃんは、すでに目当てのパンとゼリーを手にしていた。

「仲良いよねぇ」

 と言い、梨海ちゃんは欠伸を噛み締めながら歩きだした。

 当然、私もそんな背中を追い掛けるわけで。

 例のごとく「仲良くない」と、言ってはみるものの、梨海ちゃんは呆れていた。

「梨海ちゃんどうにかしてぇ」

 それでもどうにかしてほしかった私は、梨海ちゃんにすがってみる。

「嫌よ。あたしには、人の恋路を通せんぼうするような趣味なんてないからねー」

「恋路って……。別に、私、神崎先輩のことなんて、好きじゃないよ?」

「誰が、優衣の恋路、だなんて言ったのよ」

「じゃあ、誰の――」

「俺は、優衣ちゃんのこと好きだけど?」

 そろそろ階段を上り終わるというところで。

 聞きなれて、脳が、耳が覚えてしまった声が階段と廊下の微妙な所で響いた。

 って、何でいるんですかっ。


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