マジックストーン
「優衣。あたし、『神出鬼没』って言葉が似合う人見つけちゃったっ」
弾む声に私の気力は、ガタン、と音を立てて崩れていく。
な、何で現れるんですかっ。
ここは、2年の校舎なんですけど……。
不意に、神崎先輩の手元をみると、そこには、あんぱんと牛乳。
………張り込みですか?
「かっ神崎先輩、校舎間違ってると思うんですけどっ」
「そう?俺は、大好きな優衣ちゃんと一緒にご飯食べたいんだけどな」
「わ、私は梨海ちゃんと食べるのでっ!自分の教室に戻ってご飯食べてくださいっ」
何で神崎先輩と一緒にご飯食べなくちゃいけないんですかっ!
梨海ちゃんに助けを求めるように、視線を向ければ美しい笑みを浮かべた。
「あたしはひとりでも大丈夫よ?
優衣、神崎先輩と食べてくればーっ?」
「ホント?じゃあ、遠慮なく優衣ちゃん借りるけど」
「ちょっ!?い、嫌ですっ。せめて、梨海ちゃんも一緒にっ!」
梨海ちゃんの腕を掴み、神崎先輩を見上げれば、「優衣ちゃんと一緒なら誰がいてもいいよ」と私の耳元に口を寄せ甘い声で囁いた。