マジックストーン

 そこで、なぜ耳元で囁く必要があるんですかっ。

 梨海ちゃんも梨海ちゃんで、嫌そうな顔してるし……。

 そんな二人を残し、教室にお弁当を取りに行く。

「じゃあ、行こっか」

 とろけちゃうような微笑みに、一瞬ドキリと胸が高鳴った。

 う"………。

 神崎先輩の笑顔は、心臓に悪い。

「どこで食べるんですか?」

 少し、というよりはかなり不機嫌な梨海ちゃんの声。

 確かに。どこで食べる気なんだろ。

 ひとつ階段を降りて、2階にある渡り廊下――2年と3年の校舎を繋ぐ廊下を渡る。

 その後、ずんずんと階段を上っていく神崎先輩を不審に思いながらもついて行くしかない私たち。

 「ほら、着いたよ」と笑顔で振り返る。

 って、え?

「ここって屋上ですよね?鍵が――」

「開いてるよ?」

 当たり前じゃん、みたいな顔されても。

 っていうか、屋上って出入り禁止じゃなかったでしたっけ?


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