マジックストーン


 さっき神崎先輩がもっていた、あんぱんと牛乳は岩佐先輩の手に渡った。

 それを見た岩佐先輩は、一瞬眉を寄せて、神崎先輩に視線を送る。

「おい。なんであんぱんと牛乳なんだよ。てめぇはどっかの刑事かっ」

「あんぱんと牛乳は、相性がいいんだよ。ほら、俺と優衣ちゃんみたいに。ねっ、優衣ちゃんっ」

「えっ?!な、なんで私と神崎先輩の相性が良いんですかっ」

「じゃあ、俺が『パン』で優衣ちゃんが『あん』になる?」

「……どういう意味ですか?」

「俺が一生、優衣ちゃんを包んであげるっていう意味だよっ」

 星がキラキラっと飛んできそうな調子で。

 しかも『一生』って!!

「嫌ですっ。包まれたくありませんっ」

「またまた〜。肌と肌が触れ合えば、自然と流れに乗って身を委ねられるよっ」

「祥也、てめぇキモい。椎葉も大変だな。こんなやつに付き纏われて」

「あ、はい……」

 緊張してあまり食が進まないっていうのに、さらに追い討ちをかけるように、話を振らなくたって……。

 だから、返事が少し擦れてしまったのは仕方なかったの。


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