マジックストーン
第2章
ドッキドキの新学期
久しぶりの制服に腕を通し、姿見で深緑で赤のラインが入ったスカートを直しながら全体を確認する。
胸の辺りまで伸びた少し(と、いうよりか大分)クセのある黒髪を手櫛で整え、ブレザーを羽織った。
ブレザーに青色の校章――春から2年生の証が光る。
「優衣(ゆい)ちゃーん!遅刻しますよーっ」
階下から聞こえるのは、家事手伝いの彩織(さおり)ちゃん。
別に、両親がいないわけではなく、ただ単純に忙しい日々を送っていて、家にいないだけ。
“家”というよりか“日本”にいない。
私の家――椎葉(しいは)家は、音楽一家。
お父さんはプロのチェリストで、お母さんはプロのバイオリニスト。
もちろん、私も私でピアノを少し。
お父さんとお母さんは同じオーケストラに所属していて、仲は良いみたい。
今はたぶん、パリとかウィーンとかのヨーロッパを回ってるんじゃないかな?
急いで階段を下りて、鞄を掴み玄関に向かう。
ローファーを履いて振り向けば、私より短い黒髪を斜めに結っている彩織ちゃんが「いってらっしゃい」と、優しく微笑んだ。