マジックストーン
一筋縄ではいかない恋
◇◇◇
じめじめしてきた6月のある日、「ふあぁあ」と眠そうな啓輔の欠伸が聞こえてきた。
そんな盛大に欠伸されたら、伝染するって。
「そんなに眠いなら保健室行けばいいじゃん」
「行きたくっても石谷に追い出されるのがオチなんだよ。『梅雨時くらい単位取れよ』ってな。別に、単位足りてねぇわけでもねぇのに」
「フツーに足りてないと思うけど。 でも、さ。テストの時、全然授業出てないくせに、割りと順位良いよね。 何で? カンニング?」
「そう、さらりとヒデーこと言うんじゃねぇよ」
「じゃあ、何で?」
実は前から思ってたんだよね。
俺には及ばないとしても、授業すら聞いてない啓輔の頭がそこそこ良い理由。
まあ、テスト前に俺は女の子に『勉強教えて?』とか言われること(そのままベッドでオベンキョになっちゃうんだけど)が多いくらい俺は頭良いんだけど。
啓輔に、勉強教えろ、なんて一度も言われたことない。
「………千紗だよ」
なにか苦いものでも噛んだような顔で啓輔は呟いた。
「千紗?」
千紗って俺達と幼なじみで生徒会長の坂桑千紗(さかくわちさ)のことだよねぇ?
何でまた、千紗が関係あるの?