マジックストーン

 うほーっ。さすが、坂桑千紗のいとこだな!!千紗ならけたけた笑いながら啓輔に『狙った女の子はオトせないのよお〜』って言いふらすんだろうな。

 梨海ちゃんらしいっていえば、らしいけどね。

 落ちるとこまで落ちろっ、をふんだんに含めたその笑みは本当に千紗に似てて嫌になる。

「自信がないなら早々に諦めることをオススメしますよ。神、崎、先、輩?」

 さらに薔薇でも足したような、甘い香りさえしてくるんじゃないかと思わせる笑顔を残し、ちょうどやってきたバスに乗り込んだ。

「……あっ。待って……」

 俺の胸辺りにいる優衣ちゃんは、慌てた様子で梨海ちゃんの背中に視線を遣るも、俺のおかげで身動きできない。

 ぱっと『離して』と懇願するような顔で俺を見上げたけど、「だーめ」とことさら強く抱きしめた。

 ぷしゅーっとドアが閉まるのを見れば、梨海ちゃんが呆れた様子でこちらを見てる。

 それを見届けた後、俺は可愛いお姫様を腕から解放してあげた。

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