マジックストーン

「…………」

「ゆ、優衣ちゃん? 怒った?」

 優衣ちゃんから離れたのに、顔も上げずかすかに肩を震えさせる優衣ちゃんはどうやら怒っているみたい。

 身長差を考えて、俺は体を曲げた。

「優衣ちゃん、ごめ――」

 泣いてる………?

「え? 優衣ちゃん? バス乗りたかった? 今から車呼ぼうか?」

「…………っ」

 声を押し殺して静かに泣く優衣ちゃんを抱きしめることが出来ない。

 なんでだろう、って考えた時、優衣ちゃんにだけは嫌われたくないなって。

 だから、必死に泣いている理由探して、必死に泣き止んでもらえるものを探す。

「優衣ちゃ―――」

「―――のかな……」

「え?」

 ぼそりと呟いた言葉はうまく聞き取れなくて、聞き返したのは自然のことだった。

 優衣ちゃんは、ゆらゆら揺れる瞳で俺を見上げ、ぽろりと涙を零してから。

「……梨海ちゃん、私のこと、どうでも、いい、のかな……っ?」

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