マジックストーン
何でもかんでもできちゃう梨海ちゃんを羨ましいって思うけど、そんな梨海ちゃんは犬が苦手。 私はそこが可愛いとは思うんだけどな。
「ナイス! サエコ!」
ピピーっとクラスメイトのサエコちゃんがシュートを決めた。
対戦相手の3年生との得点差はあと3点。
「梨海ちゃーん! 頑張ってー!」
3年生二人のディフェンスを抜けた梨海ちゃんは、ゴールへ一直線。
がんばれっ。がんば………あ、れ……?
………どうしちゃったんだろ。クラクラして気持ち悪い………。
「ゆーいーちゃんっ。優衣ちゃんもバスケ出るの?」
「………か、ん、ざき……せんぱ……?」
青いビブスを来ている神崎先輩は首にタオルをかけていて…………。
突然、くらりと体の力が抜けた。
「えっ?! 優衣ちゃん?!」
「………すみませ……」
ぶわっと白い世界に誘われた私はそのまま瞼を閉じるしかなかった。
◇◇◇
手が温かい。
そう思ってぴくりと指が動いたのをきっかけに、覚醒してきた。
「………優衣ちゃん?」
聞こえてきた声は梨海ちゃんじゃなくて、たぶん……。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、そこにはふんわりと微笑んだ神崎先輩の姿。