マジックストーン
「良かった。まだ寝ててね?」
頷いた私を見たからなのか、神崎先輩は各ベッドの周りにあるクリーム色のカーテンを少し開け、その隙間から出ていく。
カーテンの向こうで「おー神崎、どーだ?」と養護教諭の先生の声が聞こえた。
「今起きましたよ、石谷先生」
「はいはい」
シャーっといきおい良く開いたカーテンの向こうには、神崎先輩より少し大きいくらいの身長で、細身の黒フレームの眼鏡が光る石谷先生。
起き上がろうとした私を片手で止めた石谷先生は、私の頬に軽く触れた。
「なーに、触ってるんですかー?セクハラですかー?」
石谷先生の後ろの方で、神崎先輩がふざけた口調が飛んできた。
そんな神崎先輩を自然に無視した石谷先生は、安心したような穏やかな笑みを零し、「もー平気だな」と呟いた。
「もう少し休めば、気持ち悪さも取れる」
「あ、ありがとうございます……」
「まったく椎葉は」と石谷先生は何やらぶつぶつ言ってるみたいだけど全然聞こえない。
最後の方で、「お前も大変だな」と聞こえてきた気がしたけど、何のことを指しているのか分からなかった。