黒髪マドンナ

「…んー…もう微妙かも」
携帯をパタンと閉じて悠馬はどこか諦めたように答えた。
空になった容器を物足りなさそうに振っている目の前の悠馬はついこの間の悠馬と明らかに違った。
唯子ちゃんにもう一度告り、絶対よりを戻してみせると意気込んでいた強気の悠馬はもういない。
あまりの悠馬の変わりようにあたしと優香は咄嗟に視線を合せ同時に悠馬に尋ねた。
「なんで急にそんな冷めたの？」
「唯子ちゃんになんか言われたの？」
俺にはやっぱり唯子しかいない、今度唯子とまた付き合えなかったら大学では彼女いらないなんて言っていた悠馬に何があったのか、あたしたちは悠馬を心配するというより興味本位で聞きいているといった方が近かったかもしれない。
「唯子…あっちの大学で彼氏できたんだって」
平静を装うように心持ち静かな口調で悠馬は呟き、とっくに空になったコーラの容器からコーラの甘さをわずかに含む氷をいくつか口に頬張った。
コーラがなくなると最後に氷を噛み始めるのは悠馬のいつものくせである。
何度か口を動かし氷を噛み砕き飲み込んだ悠馬はあたしと優香を交互に見た。
「『悠馬とはこれからも仲良くしていたい、友達として…ダメ？』って言われたんだよ、俺もなんて言っていいかわかんなくてさ…もう唯子の中で俺は友達なんだなって確信したらもうどうでもよくなってきてさ」