君色


思いつめた表情で店を出るチィを俺は追いかける。

俺にはあんなに嬉しそうに報告しようとしてたクセに、一体なんなんだ?



「おい!待てよっ」


チィの華奢な手を掴んで、無理やり足を止めさせた。


「…タカは、あたしがモデルになる事反対してるんだ」

「…………」

「そんな遠いところへ行くなって…雑誌のモデルとかでもいいじゃんって…」


声を震わせながら訴えるチィの瞳には、うっすらと涙が光っていた。


「あたし、そんな中途半端な気持ちでモデルになるんじゃないの!世界で通用するトップモデルになりたいの!
だから…タカの気持ちには…応えてあげられないのよ…」


チィはいつもしっかりしてて、悩み事なんかないんだろうなって勝手に思ってた。


なんだ…自分もしっかり悩んでんじゃん…。



“年下に弱い所は見せられない”



チィの言葉が一瞬俺の頭をよぎった。



本当にその通りだ。


慰めの言葉もろくに浮かんで来ない。
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