君色


息を切らしながらマンションの部屋まで行くが、ベルを鳴らしても彼女は出てきてくれない。



うわぁ…完璧に怒ってらっしゃる…。



「まどか〜〜〜…開けてよ」

「………」

最終的にはドア越しに交渉を開始する始末。

こんなかっこ悪い姿誰にも見られたくない。


やっと会えたってのにコレかよ…。



「さっきの子とは別に何でもないから!マジで!つーかさ、来るなら来るで一言連絡してくれればいいじゃん!急に来るからビックリしたよ」


……あ、コレはマズかったかな?


「………ごめん。でも嬉しかったよ、会いに来てくれた事。俺だってずっと会いたかったし…。


ねぇ…ドア開けてよ…

抱きしめさせて…」


一分一秒でも早く触れたい…。

一分一秒でも長く一緒にいたいんだ…。



その時、遠慮がちに玄関のドアが開かれ

「………お隣さんから…苦情が来ちゃうだろっ…」

と言いながら、微妙に両頬を膨らませている円がそこにいた。
< 121 / 270 >

この作品をシェア

pagetop