君色
葛藤の波が押し寄せる。
しかしたっちの差で理性が勝利をおさめる結果になった。
「…これ以上はマズいから。今日はもう帰るよ」
「まずいって何がマズいんだ?」
円はケロッとした顔でそう言った。
はぁー…なんでコイツはこうなんだろう…。
あまりにも男に対して危機感がなさすぎるから、ちょっとだけ脅してやろうと思った。
「…本当にわかんない…?」
俺は円の肩を掴んで強めに壁へ押し付ける。
そして、滴る水滴を舐めとるように胸元から首筋に向かって舌を這わせた。
「……い……い…よ?」
俺の予想だにしなかった言葉が、円の震える口元から発せられる。
俺ともあろう男が、その言葉の真意を理解するのに時間がかかってしまうくらい、それは信じられない発言だった…。