君色


俺の耳はそいつの質問を聞こうとしない。

俺自身、答えたくもない。



理由は、簡単。


こいつの質問は、俺の頭の中をひっかきまわして、思い出したくもない事を引きずり出させようとしているからだ。



「………っ」

母親がこんな俺の姿を見て、涙を流す。


これも毎度の事だったが、初めて見た時は少しビックリした。



何したって無関心だったあの人が、息子の為に涙を流すなんて。



しかし、普段の鉄仮面ぶりからは想像もつかないような母親の姿を見ても俺の心は、何も感じる事が出来なかった。
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