君色


きっとあの日、俺は一度死んだんだと思う。


目を閉じれば、思い出の中の彼女が優しく俺に笑いかける。




“もう、ずっと一緒だよ”


そう言っているかのように―――…。



泣く事さえも忘れてしまった俺の代わりに、寒さが残るこの空が泣き続けていた。





「……北斗……」


ぼやけた視界が俺の名前を呼ぶ声の方へ向けられる。


そこには、なじみのある男の姿があった。
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