君色
「辛かったね…頑張ったね…」
あたしは小さい子供をあやすように北斗の頭を優しく撫でながらそう言った。
「…中野から聞いたの?」
あたしはその問掛けに無言で頷く。
「…中野のお喋りっ」
弱味を握られたと思ったのか、北斗は一瞬悔しそうな顔をしたが、プライドを捨てたらしく、あたしの胸に顔を深く埋めて腰に手を回してきた。
「俺も…ちょうどアイツの夢を見てたんだ…」
北斗が寂しそうに呟く。
「あたしがいるよ。あんたが背負ってるもの、半分持ってあげるから…」
だから
そんな顔しないでよ。
忘れられない思い出も
消えない痛みも
いつか笑って過ごせる日がきっと来るから。
そんな事もあったなぁって言える日が必ず来るから。