君色
「須往」
俺が缶ジュースを買う為に廊下を歩いていると
市川の親友の山本が声をかけてきた。
「何?」
なんだか改まった表情だ。
「樹里と付き合うって本気?」
「うん…そのつもりだけど何で?」
「あたしは賛成できないな…。だって、須往、完全に前の彼女の事引きずってるのに…そんな状態で樹里と付き合うなんて、樹里がかわいそうだよ。
あの子は本気であんたの事が好きなんだよ?」
「…………」
「あたしには…寂しさを紛らわせるためだけに樹里と付き合う事にしたように見えるから…そういうのはやめてあげて欲しいんだ」
俺は、何も言えなかった。
図星だったんだ。
代わりにしようなんて思ってないけど
本気であいつの事が好きなのかと聞かれたら、きっと俺は答えに困ってしまう。
とうとう、俺は山本に返す言葉も見つからないまま
黙ってその場を去った。