君色

よく言うよ。
今の今まで寝てたくせに。


「おばーちゃんの散歩にいかなきゃいけないから」

「散歩ってお前…犬じゃねーんだから」

「あたしのおばーちゃん痴呆だから誰かがついてなきゃいけないの!あたしが今日は当番なの!」

「何怒ってんだよ?」

「別にっ。怒ってなんかないもん!じゃーねっ!」



あたしは勢いよくドアを閉め、開放しようがない行き場をなくした感情をもてあましたまま帰路についた。



「なんなんだよ、あいつ…(俺が途中で寝たから怒ってんのか?)」




怒ってなんかない。
怒る資格なんてない。


ただ…ショックだっただけだよ。



まだ、短いかもしれないけど、この数ヶ月一緒にいて、あたしの事をちゃんと見てくれるようになった気がしてた。



だけど…やっぱり
北斗はあたしを通してまどかを見てる…。


いつになったら…この壁は越えられるのかな…?



一週間後?一ヶ月後?一年後?




それともあたしは永遠に、まどかには敵わないの―――――?



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