君色
ガラッ―――。
市川は、カーテンも閉めずに布団に身をくるめていた。
俺がそっと市川の枕元に立つと、顔だけひょっこりと布団の袖から覗かせた。
目が赤い―――。
「泣いてたのか…?」
ブンブンブン。
気付かれまいと彼女は一生懸命首を振る。
…嘘が下手だな。
俺は市川の上体を起こし、労るようにそっとその体を抱き締めた。
「悪かった。不安にさせて」
窓からさしこむ日の光が、市川の涙に反射して輝きを与える。
俺は、その輝きを増した大きな瞳を真っ直ぐ見据えてゆっくりと唇を重ねた。
頬に伝った一筋の涙が、市川の手の甲に滴る。