君色
「……樹里」


俺は彼女の腕を引き、もう一度強く抱き締めた。


「名前…初めて呼んでくれたね…」

「…そうだっけ?」

「そうだよ。
ねぇ、お願い…もっと呼んで…?」





「樹里…」





俺は、ここにいる。

どこにも行かないよ…。






それから俺たちは、誰もいない保健室のベッドの上で、何度も何度も深く唇を重ねあった。

< 186 / 270 >

この作品をシェア

pagetop