君色
ポツ、ポツ、ポツ…
ザァーーーーーーーーッ。
濡れたようなリップノイズの音の他に、別の水音がプラスされて聞こえてくる。
「―――――?」
俺は一旦唇を離し、ゴンドラの窓の外に目を向けた。
「うっそぉー!雨!?あたし傘持ってきてないよぉ…」
ザワザワザワ…
胸が騒ぐ。
俺はこの景色を知っていた――…。
「夕立的なものかもしれないし、とりあえず雨宿りしよ?」
「きっと…止まないよ…」
「え―――?」
俺は今、どんな顔をしているだろう。
怯えてる?
それとも悲しみに満ちてる?
せっかくの樹里の誕生日なんだから…笑わなきゃ。
これ以上コイツを不安にさせちゃいけない。
「とりあえず電車で帰るべ、駅すぐそこだし」
「うん、そだね」
しかし、新井の空も生憎の大雨だった。